ミシガン州のシナゴーグ襲撃、これは正直きつい。でも「ヘイトはヘイトだ」と言い切った知事の言葉に少し救われた

ミシガン シナゴーグ 世界情勢
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ミシガン州のシナゴーグ襲撃事件で、知事が「ヘイトはヘイトだ」と言い切った。この一言が、現在のアメリカの分裂状況においてどれほど重要であるか、多くの人が気づいていないかもしれない。知事のこの発言は、単なる人道的な声明ではなく、アメリカ政治の分極化に対する一つの抵抗線を引くものなのだ。

事件の詳細としては、ミシガン州の複数のユダヤ教礼拝堂(シナゴーグ)が、反ユダヤ主義的なグループによって襲撃された。攻撃者は、ユダヤ教コミュニティに対する明確な敵意を持っていた。そして、これは単発的な事件ではなく、アメリカ全体で増加している反ユダヤ主義的暴力の一部なのだ。

アメリカにおけるユダヤ人の歴史は、相当に複雑だ。19世紀から20世紀初頭にかけて、ユダヤ人はヨーロッパの迫害から逃れてアメリカに移民してきた。彼らは、相対的には開放的なアメリカ社会で、経済的・社会的に成功を収めた。だが、その成功が、反発と嫉妬を生み出した。アメリカの人種差別的な政治势力は、ユダヤ人を「外来者」として位置づけ、様々な排斥政策を実施してきた。

第二次世界大戦後、アメリカはユダヤ人の権利保護に比較的積極的になった。イスラエル建国に対するアメリカの支持も、ユダヤ人への歴史的な道義的責任感の現れだった。だが、冷戦後のアメリカ政治の分極化に伴い、この問題も複雑化してきた。特に、イスラエル・パレスチナ紛争についてのアメリカ内での議論が、反ユダヤ主義的な言説を呼び起こすようになったのだ。

現在のアメリカにおいて、反ユダヤ主義は増加傾向にある。FBI統計によれば、ユダヤ人に対する暴力犯罪は、ここ数年、急速に増加している。そして、その背景にあるのは、政治的な分極化だ。左派はイスラエル・パレスチナ問題に関連して、ユダヤ人を「抑圧者」として描写することがある。右派は、従来からの反ユダヤ主義的なナショナリズムを掲げている。その両方が、ユダヤ人への直接的な暴力につながっているのである。

ミシガン州の知事が「ヘイトはヘイト」と言い切ったことの重要性は、その政治的明確性にある。つまり、どのような政治的立場を持つにせよ、暴力と差別は許容されない、という立場を明確にしたということだ。これは、アメリカの分裂状況では、意外に稀な事例なのだ。普通、政治指導者は、自分の支持層の感情を傷つけないよう、曖昧な表現を用いることが多い。だが、この知事は、その曖昧性を拒否し、明確な道徳的立場を提示したのである。

アメリカ社会における宗教的マイノリティの保護は、アメリカ憲法の根本的な価値である。修正第1条は、宗教の自由と言論の自由を保障している。だが、その自由も、他者の生命と身体に危害を加えることまでは許容しない。つまり、ヘイトは自由ではなく、犯罪なのだ。この原則は、ユダヤ人、イスラム教徒、そして全てのマイノリティに等しく適用されるべき原則である。

歴史的に見えば、宗教的・民族的マイノリティへの暴力は、通常、政治的分極化の際に激化する。ナチス・ドイツでも、スターリンのソビエト連邦でも、マオの中国でも、すべて強い政治的分極化の文脈で、少数派への暴力が組織化された。つまり、アメリカが現在経験している分極化は、歴史的な前例に照らせば、相当に危険な段階に達しているのだ。

ポジティブなシナリオとしては、ミシガン州の知事の発言が、アメリカ全体における反ユダヤ主義の非難を強める契機となる可能性がある。他の指導者もまた、同様の明確な立場を表示し、政治的分極化が暴力につながることを拒否する姿勢を示すかもしれない。その結果、アメリカ社会における暴力的ヘイトが減少する可能性もあり得る。

もう一つのポジティブなシナリオは、この事件をきっかけに、アメリカの法執行機関が、組織的なヘイト・テロ組織に対する監視と取締を強化する可能性である。FBI、ATF、そして地方警察が協力し、組織的なヘイト・テロネットワークを解体するなら、同様の暴力の再発を防ぐことができるだろう。

ネガティブなシナリオとしては、知事の発言にもかかわらず、反ユダヤ主義的暴力がさらに激化する可能性が懸念される。アメリカの政治分極化は、むしろ強化される傾向を示している。両極端の政治势力が、ますますラジカルになり、暴力的になるなら、マイノリティへの暴力はさらに増加するだろう。

別のネガティブなシナリオは、この事件が、アメリカ内での民族・宗教的紛争の激化へと発展する可能性である。ユダヤ人コミュニティが自衛のための組織化を進め、一方で反ユダヤ主義的なグループがさらに過激化すれば、アメリカは内戦に近い状況に直面するかもしれない。

データとしては、FBI統計によれば、2022年のアメリカにおける反ユダヤ主義的犯罪は、前年比で36%増加している。特に暴力犯罪は、86%の増加を示しており、この傾向は深刻だ。

私の見立てとしては、ミシガン州知事の発言は、アメリカの現在の危機的状況における希有な「光」を示すものだと考える。多くの政治指導者が分極化に迎合する中で、この知事は、明確な道徳的立場を示した。それは、簡単なことではない。特に、自分の支持層の中に、同情的なヘイト主義者が存在する可能性がある場合、そのような発言は、政治的リスクを伴うからだ。だが、民主主義が機能するためには、こうした勇気ある発言が必要なのだ。アメリカは、今、その分裂を克服できるかどうかの歴史的な転換点に立っているのだと、私は考える。

出典:BBC News – Michigan synagogue attack and governor’s statement

この記事を書いた人

灰島

30代の日本人。国際情勢・地政学・経済を日常的に読み続けている。歴史の文脈から現代を読むアプローチで、世界のニュースを考察している。専門家ではないが、誠実に、感情も交えながら書く。

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