イランの戦争が長引いたら食料危機になる、というニュースが正直かなり怖い

イランの戦争が長引いたら食料危機になる、というニュースが正直かなり怖い 世界情勢

食料安全保障に赤信号が灯った。少し前に、気になるニュースを見つけた。世界最大級の肥料メーカー、ノルウェーの「ヤラ・インターナショナル」のCEOであるスヴェン・トレ・ホルセサーが、ガーディアン紙のインタビューでこんな警告を発した。「イランをめぐる戦争が長期化すれば、今年の世界の食料供給に深刻なダメージが生じる可能性がある」と。特にホルムズ海峡が1年にわたって封鎖されるような事態になれば「壊滅的だ」とまで言い切っている。世界の食料を文字通り支えている肥料業界のトップが、ここまではっきり言うのだから、これは流せない話だ。

なぜ肥料がここまで重要なのか。少し整理しておく。現代の農業は化学肥料なしには成り立たない。特に窒素・リン・カリウムという三大栄養素を含む肥料は、世界の穀物生産の根幹を支えている。そしてその原料となる天然ガスや鉱物資源の多くは中東・北アフリカに偏在している。ホルムズ海峡はペルシャ湾から外洋へ出る唯一の出口で、世界の原油輸送量の約20%、さらにLNG(液化天然ガス)もここを通る。つまりここが塞がると、肥料の製造コストが跳ね上がるどころか、原料確保そのものが難しくなる。食料価格の高騰は、その数ヶ月後に必ず現実となって家庭の食卓を直撃する。

中東緊張は今に始まった話ではない。イランと周辺国・欧米との緊張は、1979年のイラン革命以来、構造的に続いてきた。核開発問題、代理勢力を通じた地域への影響力行使、イスラエルとの対立。この複雑な地政学的積み重ねがあるからこそ、一度緊張が高まると簡単には収まらない。一方でイランという国には、4000年を超える文明の歴史があり、中東有数の知的階層と若い人口を持つ。外交が機能していた時期には世界と交流し、経済も動いていた。イランの人々が平和な環境に置かれれば、地域全体の安定に貢献できる底力があると、個人的には思っている。だからこそ、この緊張状態が続いていることは、本当にもったいないと感じる。

SNSでも懸念の声が広がっている。これは正直きつい話だと思ったので、X(旧ツイッター)で「Global food supplies」と検索してみた。すると「イランの戦争が食料価格に与える影響を過小評価している」「肥料会社のトップがここまで言うのは異例だ」「2022年のウクライナ侵攻で食料価格が暴騰したときを思い出す」といった声が次々と出てくる。2022年はロシアのウクライナ侵攻によって世界の小麦とひまわり油の供給が激減し、途上国で深刻な食料不安が広がったのは記憶に新しい。あのときと同じことが、今度は肥料・エネルギーという別のルートで起きようとしている、という危機感が共有されているのがわかる。

日本への影響は決して他人事ではない。日本の食料自給率はカロリーベースで約38%。つまり6割以上を輸入に頼っている。そして肥料の原料にいたっては、ほぼ全量を輸入している。ホルムズ海峡の封鎖が長引けば、まず燃料価格が上がる。運送コストが上がる。農家のコストが上がる。そして食品価格が上がる。すでにここ数年で食料品の値上がりに慣れてしまった感覚があるが、それに追い打ちをかける展開になりかねない。ただ、日本には長年にわたって培ってきた「輸入先の多角化」という強みがある。一つの地域に依存しない調達ルートの構築は、日本の商社や農林水産省が地道に取り組んできた部分でもある。この積み重ねが、有事においてどれだけ機能するかが問われることになる。

ポジティブとネガティブ、両面を見ておく。ポジティブなシナリオとしては、国際的な外交圧力が高まり、戦闘が数ヶ月以内に収束するケースがある。ホルムズ海峡が実際に封鎖されない限り、サプライチェーンへの直接的なダメージは限定的にとどまる可能性がある。また、このような危機をきっかけに、日本が国内肥料生産技術や代替農業技術への投資を加速させるという前向きな動きも期待できる。一方でネガティブなシナリオを考えると、紛争が半年・1年と長引いた場合、肥料の調達コストが急騰し、2022年〜2023年に世界を揺るがした食料危機が再来する恐れがある。特に食料輸入への依存度が高い途上国では、深刻な飢餓リスクが現実化しかねない。日本でも輸入食品の価格上昇が家計を直撃し、低所得世帯ほど大きな打撃を受ける構造的問題が浮き彫りになるだろう。

カギを握るのは外交の速度だ。今後の展望として、最も注目すべきは紛争の「長期化を防ぐための国際的な働きかけ」がどれだけ早く機能するかだと思っている。ヤラのCEOがわざわざメディアに出てこう発言するのは、業界として政治に対して「早く動いてくれ」というシグナルを出しているのだと読んでいい。こういう民間からの警告が無視されないよう、日本も単なる「被害を受ける側」ではなく、外交的働きかけに積極的に関与していくべきだろう。加えて、肥料の国内代替技術や食料の備蓄体制の強化は、もはや「将来の課題」ではなく「今年の課題」として動き出すべきタイミングに来ている。食料安全保障を真剣に議論するための、現実的な起点がここにある。

出典:Guardian World

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