ピンク・フロイドのギターが約22億円で落札。いやちょっと待って、これは音楽の話じゃなくなってる

ピンク・フロイドのギターが約22億円で落札。いやちょっと待って、これは音楽の話じゃなくなってる 世界情勢

22億円のギター落札、世界が騒然。BBCがこんなニュースを伝えていた。ピンク・フロイドのギタリスト、デヴィッド・ギルモアが使っていたギターがオークションで1460万ドル、日本円にして約22億円で落札されたというのだ。ギターの世界最高落札額を更新する、文字通りの記録破りである。ちょっと待ってほしい。ギター一本に22億円だぞ。

「狂気」を生んだギターの正体。このギターは「ブラック・ストラト」と呼ばれる1969年製のフェンダー・ストラトキャスターで、ギルモアが長年にわたって愛用してきた一本だ。「狂気(ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン)」「炎(ウィッシュ・ユー・ワー・ヒア)」「アニマルズ」など、ロック史に残る名盤の数々でその音を刻んできた。弾いた本人が手放したという事実も驚きで、ギルモアは売却益を気候変動対策の慈善団体に寄付する意向を示しているという。売る理由が売る理由だし、これはこれで筋が通っている話ではある。

なぜこれほどの値がつくのか、文化的背景を読む。ロックの黄金期である1970年代、ピンク・フロイドはただのバンドではなかった。哲学的な歌詞、壮大なサウンドスケープ、そして圧倒的なライブ演出によって、音楽を「体験」の領域に引き上げた存在だ。「ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン」はビルボードチャートに750週以上ランクインし続けたという伝説的なアルバムで、今なお世界中で聴かれ続けている。そういう文化的遺産の「物的証拠」として、このギターは単なる楽器を超えた存在になっている。欧米における音楽遺産への評価の高さ、そして「本物」にとんでもない値段をつける文化の厚みは、正直なところ日本にはまだなかなかない部分だと思う。良い意味での「狂気」と言っていい。

X(旧ツイッター)でも世界中が反応中。X(旧ツイッター)で「Pink Floyd guitar」と検索すると、世界中から「信じられない」「次に売るのは誰だ」「慈善目的なら美しい話だ」といった声が飛び交っている。一方で「これを買える人間が地球に何人いるんだ」という冷静な突っ込みもあって、これは正直笑った。庶民感情として完全に正しい反応だと思う。

日本の経済や文化市場への影響を考える。一見すると日本に直接関係なさそうなニュースだが、実はそうでもない。まず円安の影響で、海外のオークション市場における日本人入札者の競争力は大きく落ちている。22億円というのは現在の為替レートで換算した金額で、数年前の円高時代なら感覚的にもう少し「現実的な数字」に聞こえたはずだ。そして、日本にも楽器や音楽関連の資産市場は確実に存在する。ビンテージ・ギターの価格は世界的に上昇傾向にあり、国内のコレクター市場も静かに熱を帯びている。また、日本はフェンダーやギブソンなどの高品質なコピーモデルを生産する技術力で世界に認められてきた国でもある。楽器へのリスペクトという点では、日本の職人文化は本物だ。

ポジティブとネガティブ、両面から見る。ポジティブなシナリオとして考えると、このニュースが音楽遺産や楽器への関心を世界的に高め、日本国内でも「音楽文化を資産として評価する」動きが加速する可能性がある。すでに一部の投資家はビンテージ楽器をアート作品と同様の代替資産として扱い始めており、日本の市場もその流れに乗れるだけのコレクター層と審美眼を持っている。一方でネガティブなシナリオとしては、こうした超高額落札が続くことで「音楽の道具としてのギター」の価値観が歪み、本来弾かれるべき楽器がガラスケースの中に閉じ込められていく流れを加速させてしまうことだ。22億円のギターは誰も弾かない。それは少し寂しい話でもある。

音楽遺産市場の潮流と、日本にとっての鍵。今後は、音楽や芸術にまつわる「文化的資産」の市場がさらに拡大していくのは間違いない。高齢化した欧米のロック世代が財産を整理し始める中で、こうした落札記録はまだ更新され続けるだろう。日本にとってのカギは、この波を「遠くで起きている話」として眺めるのではなく、国内の音楽文化や職人技術を世界市場に接続していく動きを加速させることだ。日本製の楽器や、昭和の音楽シーンを支えた機材には、世界が注目するだけの価値が十分に眠っている。それを掘り起こす人間が出てくれば、次に記録を塗り替えるのは別の国の話ではなくなるかもしれない。

出典:BBC World

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