中国が「民族団結法」を通した。これは正直、背筋が冷える話だと思う

中国が「民族団結法」を通した。これは正直、背筋が冷える話だと思う アジア・東アジア

中国がまた動いた。少し前、こんなニュースが目に入った。中国が「民族団結」を名目にした新しい法律を制定したという話で、BBCがその詳細を報じている。内容を読んで、正直しばらく画面を閉じられなかった。

「団結」という名の強制的な同化。この法律の核心は、少数民族の子どもたちに対して、幼稚園入園前から高校卒業まで、一貫して標準中国語(普通話)を教育の中心に置くことを義務づけるというものだ。つまり、チベット語もウイグル語もモンゴル語も、自分たちの母語よりも先に「国語」を学べ、ということになる。「民族団結」という美しい言葉が冠されているが、実態は少数民族の言語・文化・アイデンティティを制度的に希薄化していくプロセスにほかならない。これは正直きつい。言語というのは単なるコミュニケーションツールではなく、その民族が積み上げてきた歴史や世界観そのものだからだ。それを「就学前から」体系的に置き換えていくというのは、文化の緩慢な消去に近い。

この動きには長い歴史的文脈がある。中国という国は、漢民族を中心としながらも55の少数民族を抱える多民族国家だ。その統治の難しさは、近代以前から続く課題でもある。清朝の時代には満洲族が支配しながらも漢文化を尊重する姿勢を持っていたし、中華人民共和国の初期には少数民族の自治と文化保護をある程度認める方針もあった。しかし習近平政権以降、「中華民族の偉大な復興」というスローガンのもとで、統一的な国民アイデンティティの形成が急速に強化されてきた。新疆やチベットでの動きはその最も極端な例だが、今回の法律はそれを全国規模で制度化するものとも読み取れる。一方で、中国がこれだけ大規模な社会インフラ整備や教育投資を全土に展開できる国家能力は本物で、その点は客観的に認めなければならない部分でもある。問題は、その力が誰のために、どう使われているかだ。

世界もこの動きを注視している。X(旧Twitter)で「China approves ethnic」と検索すると、英語圏を中心にさまざまな声が上がっているのがわかる。「文化的ジェノサイドの制度化だ」という強い言葉を使う人もいれば、「中国内部の問題に外部が口を出すべきではない」という意見もある。ただ、少数民族の当事者コミュニティからは一貫して「これは私たちの存在を消すものだ」という声が出ており、そこは重く受け止めるべきだと思う。

日本への影響は、経済より価値観の問題として現れてくる。直接的な経済的打撃という意味では、この法律がすぐに日本のGDPや株価を動かすわけではない。ただ、中長期的には無視できない影響がある。まず、人権問題を理由に欧米企業が中国投資をさらに縮小・撤退する動きが加速した場合、日本企業も「中国事業継続」に対するステークホルダーからの圧力が高まる。すでに新疆綿や強制労働問題で日本のアパレル業界が板挟みになった経験があるが、あの構図がより広い文脈で繰り返されるリスクがある。日本は「モノを作って世界に売る国」であると同時に、近年は多様性や人権への配慮を重視するブランドイメージを海外で築きつつある。そのポジションを守るためには、中国との取引関係についてより明確なスタンスが問われるようになるだろう。

ポジティブなシナリオとネガティブなシナリオが交差する。ポジティブな方向を考えるなら、この法律への国際的な批判が積み重なることで、中国政府が内外の圧力を受けて運用を緩和せざるを得なくなる可能性がある。歴史的に見ても、中国の政策は国際社会の反応を見ながら微調整されることがあり、完全に無風ではない。また、日本が人権・多様性の尊重という点で率先してスタンスを示すことで、東南アジアや中央アジアの少数民族コミュニティとの信頼関係を深め、外交的なプレゼンスを高めるチャンスにもなりうる。一方、ネガティブなシナリオとしては、この法律が粛々と実行に移され、現地の民族文化が取り返しのつかない形で失われていくことだ。そして国際社会が「懸念を表明」しながらも経済的利害から中国との関係を優先し続ける、という最悪のパターンも十分にありうる。さすがにそれはおかしくないか、と言いたくなるが、現実はそういう動き方をすることが多い。

鍵を握るのは、国際社会の「本気度」と中国内部の変化だ。今後この問題がどう動くかは、欧米と日本が人権問題を対中関係の実質的な交渉カードとして使えるかどうかにかかっている。言葉だけの非難で終わるのか、それとも貿易・投資・国際機関での行動として可視化されるのか。日本はその中で、独自の歴史的文脈と地理的近接性を持つ立場として、声を上げ続けることに意味がある。少数民族の文化と言語を守ることは、人道的な問題であると同時に、世界の多様性という観点でも失ってはならない資産だ。中国社会の内側から、若い世代を中心に変化を求める声が育つかどうか、そこも中長期的に注目していきたい。

出典:BBC World

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