ホルムズ海峡封鎖にIMOが「海上回廊」で動いた——日本のガソリン代が月5,000円増える未来

ガソリン1リットル204円。この数字を聞いて「高いな」と思った人は多いだろう。だが、これは予測ではなく、すでに現実味を帯びたシナリオだ。イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖を受け、原油先物価格はわずか1週間で67ドルから120ドル近くまで跳ね上がった。そして3月20日、IMO(国際海事機関)がようやく「海上回廊」の設置に向けた合意に動いた。

そもそもホルムズ海峡は、なぜこれほど重要なのか。世界の石油輸送の約2割がこの幅わずか33kmの水路を通過する。日本に限れば、原油輸入の94%が中東産であり、そのタンカーの約8割がホルムズ海峡を経由している。つまり、この海峡が塞がれるということは、日本のエネルギー供給の「大動脈」が詰まることに等しい。

日本に例えると、こういうことだ。原油が1バレル10ドル上がるごとに、日本の家庭のガソリン代は月約400円、年間で約5,000円増える。現在の価格高騰が続けば、1世帯あたり年間2万円以上の負担増になる計算だ。これは消費増税1%分に相当するインパクトで、家計を直撃する。しかも、ガソリンだけの話ではない。物流コスト、電気代、食品価格——原油高騰の波は生活のあらゆる場面に広がる。

タンカーの保険料が10倍に跳ね上がっている事実は、あまり報じられていない。戦乱地域に指定されたことで、船体保険(ハル保険)は従来の3倍から10倍に膨らんだ。1隻あたり月額数億円の追加コストだ。この費用は最終的に消費者が負担することになる。つまり原油価格そのものが下がっても、輸送コストの高騰によって日本の物価は簡単には元に戻らない。

IMOの「海上回廊」構想は、戦時中の護送船団方式を現代に蘇らせるようなものだ。各国海軍の護衛のもと、民間タンカーが安全に通過できるルートを設定する。第二次世界大戦中、大西洋で連合国が実施した商船護衛に近い発想だが、21世紀にこれが必要になるとは誰が予想しただろうか。合意に至ったこと自体は前進だが、実際の運用開始までには数週間から数カ月を要するとみられており、即効性は期待できない。

野村総合研究所の木内登英氏は、原油価格が120〜130ドルで推移した場合、日本のGDPが0.6%押し下げられると試算している。スタグフレーション——物価は上がるのに景気は停滞する最悪のシナリオだ。日経平均が1日で2,892円下落したのは、市場がこのリスクを織り込み始めた証拠だろう。

日本がいま問われているのは、中東依存94%という構造そのものだ。この数字は、韓国(約70%)や中国(約50%)と比較しても突出して高い。再生可能エネルギーの推進、石油備蓄の戦略的活用、中東以外からの調達ルート確保——どれも以前から言われてきたことだが、「やらなくても何とかなってきた」という甘さが、いまツケとして回ってきている。ホルムズ海峡の危機は、日本のエネルギー安全保障の脆弱さを改めて白日のもとにさらした。次の一手を打てるかどうかが、この国の10年後を決める。

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