ヴァレンティノへの追悼ショー、これは「美しさとは何か」という問いへの答えだと思う

ヴァレンティノへの追悼ショー、これは「美しさとは何か」という問いへの答えだと思う 世界情勢

伝説のデザイナーが逝った。今年1月、ファッション界の巨星ヴァレンティノ・ガラヴァーニが亡くなった。「ヴァレンティノ・レッド」と呼ばれる鮮烈な赤を世界に刻み込み、ジャクリーン・ケネディやオードリー・ヘプバーンといった時代のアイコンたちを美しく飾り続けたデザイナーだ。その死後初めての本格的なコレクションショーが、ローマで行われた。ガーディアンの記事によれば、現クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレがそのショーをデザインし、ヴァレンティノへの追悼と、自身の母への想いを重ねた作品として発表したという。

ミケーレが込めた「美」の再定義。アレッサンドロ・ミケーレといえば、グッチで独自のロマンティックかつ過剰なまでの美学を打ち出し世界を驚かせた人物だ。その彼がヴァレンティノに移籍し、今回のショーで問いかけたのは「美しさとは常に変わりゆくものだ」というテーマだった。亡くなったヴァレンティノが体現していたのは、豪華なヨットとパグ犬をこよなく愛するジェットセット的な豊かさと、その豊かさにふさわしい衣装を富める女性たちに届けるという明確なビジョンだった。ミケーレはその遺産を踏まえながら、「美しさ」という概念をもっと流動的で個人的なものとして再解釈しようとしている、と私は読んだ。

ローマという場所が持つ意味の深さ。ショーの舞台がローマであることには、単なる「お膝元」という以上の意味がある。ローマはヴァレンティノが1960年に自身のメゾンを立ち上げた地であり、ミケーレ自身もローマ出身だ。古代から続く建築、彫刻、絵画の層が積み重なるこの都市は、「美とは何か」を問い続けてきた場所でもある。イタリアという国のすごいところは、現代のポップカルチャーと数千年の美術史が同じ土壌に根を張っているところで、ファッションもその延長線上にある。ヴァレンティノのショーをローマで行うのは、単なる演出ではなく、ある種の「文明への敬礼」だと思う。これは正直、かなりぐっとくるものがある。

SNSでも「美の変化」をめぐる声が広がっている。X(旧ツイッター)で「Beauty always changing」を検索すると、このショーに触発されたとみられる声が世界中から上がっているのがわかる。「美しさの基準は時代とともに変わる、だからこそファッションは面白い」「ヴァレンティノへの敬意を感じた」「ミケーレはまた新しいことをやってくれた」といった反応が多く、ショーが単なる追悼に留まらず、ファッションそのものの意味を問い直す機会として受け取られていることが伝わってくる。

日本のラグジュアリー市場への波紋。さて、これが日本にどう関係するかという話をしたい。日本はラグジュアリーブランドにとって世界でも有数の重要市場であり続けており、ヴァレンティノも銀座や表参道に旗艦店を構えている。ミケーレ体制のもとでブランドの方向性が刷新されることは、日本の消費者にとっても直接的な変化として感じられるはずだ。日本人はもともと「職人の仕事」や「美意識の継承」というものに敏感で、伝統と革新が共存するデザインを高く評価する文化がある。その意味では、ミケーレが「変わりゆく美しさ」を打ち出すこのタイミングは、日本市場との親和性が高いとも言える。

ポジティブとネガティブ、二つのシナリオ。明るいシナリオとして考えられるのは、ミケーレの新しいヴァレンティノが日本市場で新たなファン層を開拓し、特に30〜40代の感度の高い層を取り込むことだ。グッチ時代にミケーレのスタイルを愛していた日本人消費者は少なくないし、彼らがヴァレンティノに流れ込む可能性は十分ある。一方で懸念されるのは、ヴァレンティノという名前が持つ「古典的なエレガンス」へのブランドイメージと、ミケーレの装飾的で実験的な美学との間に生まれるギャップだ。コアなヴァレンティノファンが離れていくリスクは無視できないし、ブランドのアイデンティティが揺らいで見えるという声も今後出てくるだろう。さすがにそこのバランスは慎重にやってほしい、と思う。

鍵は「継承」と「変革」の両立にある。今後の展望として、ミケーレがヴァレンティノでどれだけ「故人へのリスペクト」と「自分自身のビジョン」を両立させられるかが、このブランドの今後を決定づける最大のポイントになるだろう。追悼ショーという出発点は感情的な意味でも商業的な意味でも絶好のスタートだったはずで、ここで得た共感と注目を次のコレクションにどうつなげるかが真価を問われる局面になる。日本市場においては、オンラインとリアル店舗の体験を融合させた形での展開が鍵になるはずで、単に服を売るだけでなく「ヴァレンティノという物語」を売る戦略に徹することができれば、ミケーレ体制は長期的に成功するだろう。美しさが変わり続けるのなら、そこについていける人間と組織だけが生き残る。ファッションも、ビジネスも、同じだと思う。

出典:Guardian World

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