アップルが中国に手数料を下げた。これは「圧力に屈した」だけじゃない気がする

アップルが中国に手数料を下げた。これは「圧力に屈した」だけじゃない気がする アジア・東アジア

アップルが中国で動いた。ガーディアンが伝えているニュースによると、アップルが中国本土のアップストアにおけるアプリ販売手数料を25%に引き下げると発表した。従来は30%だったから、5ポイントの削減だ。これは中国政府の規制当局からの圧力を受けての判断であり、テンセントやバイトダンスといった中国の大手開発者にとっては「念願の突破口」とも言える動きになっている。

アップルが中国で「折れた」理由。単純に言えば、アップルにとって中国は無視できない市場だ。売上規模の面でいえば、中国はアメリカに次ぐ第二の市場である。そこで規制当局が「手数料が高すぎる」と言い始めたとなれば、選択肢は限られてくる。世界的にもアプリストアの独占的な手数料体系への批判は高まっており、ヨーロッパではすでにアップルが規制の網に引っかかっている。中国もその流れに乗るかたちで、アップルへの圧力を正当化しやすい局面だったのだろう。それにしても、あの「30%は変えない」という姿勢を長年貫いてきたアップルが動いたのは、なかなかの出来事だと思う。

中国が「ルールを使う側」になった背景。ここ数年、中国はデジタル市場において外国企業に対するスタンスを明確に変えてきた。かつては「来てください、投資してください」という姿勢が強かった。しかし国内のテクノロジー産業が育った今、むしろ自国企業を守り、外資には「我々のルールで商売してもらう」という方向に動いている。テンセントやバイトダンスが手数料引き下げの恩恵を受けるというのは、まさにその構図の産物だ。中国のデジタルエコシステムの成熟度は世界でも屈指のレベルにあり、モバイル決済やショートムービー文化など、むしろ世界が学ぶ面も少なくない。その土台があるからこそ、政府も交渉力を持てるわけだ。

ネット上でも議論が起きている。X(旧ツイッター)で「Apple cuts China」と検索してみると、「なぜ中国だけ特別扱いなんだ」「欧米の開発者にも同じ条件を適用すべきだ」という声が多く目に入る。一方で「これがグローバルな手数料引き下げの先例になるかもしれない」と前向きに受け取る声もある。正直、この怒りはわかる。アップルはこれまで欧州の法的圧力には渋々対応してきたが、今回のように特定の市場で先に動くとなると、「結局お金と政治力があるところには従うんじゃないか」という印象を持たれても仕方ない部分はある。さすがにこれは少し首をかしげてしまった。

日本への影響は、じわじわ来るタイプだ。今回の動きが日本の開発者や消費者に直接影響するかというと、現時点では「今すぐ何かが変わる」わけではない。しかし中長期で見ると、話は違ってくる。日本国内でもアップルのアプリストア手数料への不満は開発者の間で根強い。公正取引委員会が調査を進めているという話も以前から出ていた。中国がアップルから25%を勝ち取ったとなれば、「ではなぜ日本は30%なのか」という議論に火がつきやすくなる。日本の開発者コミュニティは技術力が高く、誠実な仕事をする人たちが多い。その人たちが正当な取り分を得られる環境になることは、シンプルに良いことだと思う。

ポジティブとネガティブ、両方見えている。楽観的なシナリオとして考えると、今回の中国での手数料引き下げが「グローバルスタンダードの見直し」につながり、日本やヨーロッパ、アメリカの開発者にも恩恵が波及する可能性がある。アップルがひとつの市場で引き下げた前例ができれば、他の地域の規制当局が「同等の条件を」と求めやすくなる。これはアプリ開発産業全体の健全化につながるだろう。一方で悲観的なシナリオとしては、アップルが中国という「特別な市場」には特例対応する代わりに、他の地域では30%を守り続けるという「分断対応」に終わる可能性もある。中国だけが優遇されるとなれば、むしろ市場の不公平感は増す。アップルとしては、中国でのビジネスを維持するために動いただけで、それ以上でもそれ以下でもないという割り切りで動いているとすれば、これは構造的な改善にはならない。

カギは「前例の拡張」ができるかどうか。今後の焦点は、今回の中国での動きが孤立した出来事に終わるかどうかにかかっている。日本の公正取引委員会や欧州の競争当局が「中国と同等の条件を求める」という方向で動けば、アップルはさらに対応を迫られることになる。アプリストアの手数料構造は長年「変えられないもの」として扱われてきたが、今回それが「変えられる」と世界が知った。そのインパクトは小さくない。アップルが次にどの市場で、どんな条件の変更を発表するか。そこを注視しておくべきだと思うし、日本の開発者とって「自分たちの番」はそう遠くないだろう。

出典:Guardian World

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