米最高裁がトランプ関税を違憲判断、日本の輸出産業に再び嵐が来る

アメリカ

25兆円。日本の自動車輸出が1年で稼ぎ出す規模だ。その土台が、大統領令1本で揺らいでいた。

2026年2月20日、米連邦最高裁判所は6対3の票決で、トランプ政権が「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づいて発動してきた相互関税は違憲・違法との判断を下した。「大統領に課税権限はない。課税は議会の仕事だ」。多数意見はシンプルだった。昨年7月の日米合意で日本向けに設定された15%の追加関税も、この瞬間に法的根拠を失った。

ではトランプ大統領は引き下がったか。そんなはずがない。

判決翌日の2月21日、大統領は早速「通商法122条」という別の根拠法に飛び移った。議会の承認なく発動できる緊急権限だが、適用できる期間は150日間に限定される。課された税率は全世界一律10%。さらに翌日には「15%に引き上げる考え」を示唆し、市場を再び揺らした。ルールが変わったのではなく、ゲームそのものがまだ続いているのだ。

ここで「日本に例えると」の視点が必要になる。

相互関税の時代、日本の自動車メーカーは米国向け輸出に15%の追加コストを抱えていた。トヨタ1台を100万円のコストで作って米国に売ると、関税だけで15万円が上乗せされる計算だ。今度の10〜15%は金額こそ似ているが、本質的に違う。IEEPAは「国家間交渉で下げられる関税」だった。通商法122条の関税は150日の期限付きで、その後どうなるかは法的に不透明だ。企業は工場建設や部品調達の計画を立てようにも、前提が固まらない。

え、そうなの?と思うかもしれないが、実は最高裁の判断は初めてではない。

昨年9月、連邦控訴裁がすでにIEEPA関税を違憲と判断していた。トランプ政権は上訴し、最高裁での逆転を狙った。だが最高裁はその判断を支持した。共和党保守系判事が多数を占める現在の最高裁でも、大統領の課税権限には限界がある、という意思表示だ。これは歴史的にも異例の展開で、1970年代以降ほぼ運用されてきた大統領貿易権限の大きな転換点といえる。

日本企業が今すべきことは何か。

経済産業省はすでに「米国関税対策ワンストップポータル」を開設し、ジェトロが中小企業向けの相談対応を強化している。鉄鋼・アルミニウム・自動車への232条関税は依然有効で、これは最高裁判決の対象外だ。複数の根拠法が絡み合う今の状況は、「どの関税が生きていてどれが死んでいるか」を商社や法務チームが一覧管理しなければならない段階に来ている。

150日後、通商法122条の期限が切れたとき、何が起きるかは誰にもわからない。

次の交渉が始まるのか、また別の根拠法が持ち出されるのか、それとも議会が動くのか。確実なのは、この問題が「終わった」と言える日はまだずっと先だということだ。日本の輸出産業はその不確実性を、コストとして飲み込みながら戦い続けることになる。

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