トランプとイランの緊張、再び高まる。BBCが報じているこの記事を読んで、正直「また来たか」という感覚になった。イランをめぐる状況が、ここにきて急速に不透明さを増している。トランプ大統領は核交渉でも軍事的圧力でも自信満々の姿勢を崩していないが、その一方で「早期解決の可能性は日に日に薄れている」という見方が広がっている。ニュースの根っこにあるのは、どのシナリオを選んでもリスクがついてまわるという、外交としては最悪に近い構図だ。
強硬路線の自信と現実のギャップ。トランプ政権がイランに対して取り得る選択肢は大きく三つある。外交交渉による核合意の再構築、経済制裁のさらなる強化、そして軍事的オプションだ。いずれも「やれば片付く」という話ではない。交渉を選べば、国内の強硬派からは「弱腰」と批判される。制裁をさらに絞れば、イランが中国やロシアとの連携を強め、かえって孤立化が逆効果になる可能性がある。そして軍事行動は、中東全体を燃やしかねない最悪のシナリオに直結する。それでもトランプは自信を保ち続けているわけで、これは正直きつい状況だと思う。
イランという国の複雑な歴史的背景。なぜこれほど話がこじれるのかを理解するには、イランという国の立ち位置を押さえておく必要がある。イランは古代ペルシャ帝国の流れを汲む、文明的に非常に深い国だ。詩人ハーフィズを生んだ文化的な豊かさと、「外部勢力に屈することへの強烈な拒絶感」が歴史的に同居している。1953年のモサデク政権転覆がアメリカとイギリスの関与によるものだったという記憶は、今もイラン社会の底流に生きている。「核」の問題は技術や安全保障の話だけではなく、「主権」や「尊厳」と深く結びついているという点が、交渉を難しくさせる本質的な理由だ。
SNSでも割れる評価。X(旧Twitter)では「Trump confidence undimmed」で検索すると、様々な声が飛び交っている。「これが彼の強さだ」と支持する声がある一方で、「自信と無謀を混同している」「交渉の窓口を閉じているのは誰だ」という批判的な意見も多い。アメリカ国内でも評価が真っ二つに割れていることが、この問題の政治的難しさをよく表している。単純に「強い外交」として称えられるような状況ではなくなっている、というのが率直な印象だ。
日本への影響は原油価格から始まる。「中東の話でしょ」で終わらせられないのが日本の立場だ。日本はエネルギーの大部分を中東に依存しており、ホルムズ海峡付近で緊張が高まれば、原油価格は即座に動く。実際に2019年にタンカーが攻撃を受けた際も、日本企業のリスク管理は一時的に大きな負担を強いられた。円安が続く今の局面で原油高が重なれば、輸送コスト・製造コストが上がり、家計への圧力も無視できなくなる。ただ、日本はイランとの間に独自の外交チャンネルを維持してきた数少ない国でもあり、この「中立的な仲介者」としての立場は今後さらに価値を持ってくる可能性がある。
ポジティブとネガティブ、両方のシナリオ。明るいシナリオを描くとすれば、トランプが国内政治的な「成果」を必要とするタイミングで、水面下の交渉が急速に進む展開だ。トランプは「ディールメーカー」を自称しており、オバマ政権の核合意をひっくり返した手前、「自分流の合意」を作ることへの動機は実はある。そこに日本や湾岸諸国が裏側で動けば、意外な速度で局面が変わることも考えられる。一方、暗いシナリオはイスラエルが単独行動に踏み切るか、イラン国内の強硬派が主導権を握り交渉テーブルが完全に崩壊するケースだ。そうなれば地域全体が一気に不安定化し、エネルギー市場だけでなく世界経済全体が揺れる。どちらのシナリオも、決して絵空事ではない。
カギは「落とし所」を誰が作れるか。今後この問題がどう転ぶかは、結局「どちらかが顔を保てる形の妥協点を誰が設計できるか」にかかっていると思う。トランプはメンツを重んじ、イランは主権を重んじる。この二つが正面から衝突し続ける限り、解決は遠い。逆に言えば、第三者が「どちらも勝った」と言えるような枠組みを作ることができれば、話は動く余地がある。日本はその役割を果たせる数少ない国の一つであり、エネルギー安保の観点からもこの外交的ポジションを活かすべきだろう。イラン問題の解決を「アメリカ任せ」にしない姿勢が、これからの日本外交の本当の試金石になるはずだ。
出典:BBC World


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