フランスで昨日、地方選挙の決選投票が行われた。結果は「極右の躍進」というよりも、「極右の限界」を浮き彫りにした。
マリーヌ・ル・ペン率いる国民連合(RN)は、マルセイユ、トゥーロン、ニームという3つの主要ターゲット都市のすべてで敗北した。一方でニースでは、RNに近い共和党のエリック・シオッティが約47.7%の得票率で勝利し、党にとって最も重要な都市部での成果を収めた。パリは左派が維持した。
数字だけ見れば善戦に映る。だが「善戦」と「勝利」の間には、フランス政治特有の深い溝がある。
フランスの地方選挙は2回投票制を採用している。1回目で過半数を取れなければ、2回目の決選投票に進む。ここでフランス特有の現象が起きる。「共和国戦線」と呼ばれる極右包囲網だ。左派と中道が手を組み、極右候補を落とすために票を一本化する。マルセイユでは左派現職のブノワ・パヤンが54%対40%でRN候補を退けたが、この数字は「反極右」票の結集によるものだ。
日本に例えるなら、こんな状況を想像してほしい。ある政党が全国の選挙区で30〜40%の支持を安定して獲得している。世論調査では常にトップ。ところが首長選になると、残り全政党が連合して対抗馬を立てるため、どうしても過半数に届かない。票は取れるのに椅子は取れない——国民連合が20年以上抱えてきたジレンマがまさにこれだ。
なぜ「地方選挙の敗北」が重要なのか。答えは2027年にある。
フランスの次期大統領選は2027年。マクロン大統領は3選禁止のため出馬できない。国民連合にとって地方選挙は、大統領選への足場固めだった。市長のポストを押さえれば地方政治の実績ができ、「統治能力がある政党」というイメージを定着させられる。今回の結果は、その戦略にブレーキをかけた格好になる。
ただし、注目すべき事実がある。ニースでのシオッティの勝利は、極右陣営が「正面突破」ではなく「既存政党との融合」という迂回路を見つけつつあることを示している。共和党の看板で出馬し、RNの支持基盤を取り込む。正面から「極右」のレッテルを貼られることなく権力に近づく手法は、イタリアのメローニ首相がかつて成功させたパターンに近い。
フランスの有権者は、極右に「ノー」と言ったのではない。極右が「市長」になることに「まだ早い」と言ったのだ。
この「まだ」がいつまで持つかは、経済次第だろう。ECBは2026年のユーロ圏成長率予測を0.9%に下方修正し、インフレ率予測を2.6%に引き上げた。物価は上がり、成長は鈍化する。フランスの失業率は7%台で横ばいのまま改善の兆しが見えない。生活が苦しくなれば、「共和国戦線」の結束力は確実に弱まる。
2027年の大統領選に向けて、フランス政治はこれから最も不安定な18ヶ月に入る。極右が都市部で勝てなかったことは事実だ。しかし彼らが30〜40%の票を安定的に集め続けていることも事実である。地方選挙は「極右の敗北」として報じられるだろうが、実態は「既存政党が生き残るために全力で連合を組まなければならなかった」ということにほかならない。防衛側が全力を出してようやく守り切った試合を、「勝利」と呼んでいいのかどうか。

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