48時間。トランプがイランに突きつけた期限は、日本のガソリンスタンドの価格表示が変わるより短い。
3月22日、トランプ米大統領はイランに対し「48時間以内にホルムズ海峡の商船通航を再開しなければ、最大規模の発電所から攻撃する」と通告した。すでに米軍はイラン沿岸の軍事施設を破壊し、「海峡におけるイランの脅威は低下した」と発表している。だが、イランは即座に反撃を宣言。「実行すれば中東全域の主要インフラを攻撃する」と応じた。
前回の記事ではIMOの海上回廊について取り上げたが、事態はさらに加速した。今回の焦点は「最後通牒」そのものと、それに対する日本の外交姿勢だ。
「48時間」が意味するもの
トランプが設定した48時間という期限は、軍事的には極めて短い。通常、大規模な海上封鎖の解除には機雷除去だけで数週間かかる。つまりこの期限は、物理的に封鎖を解くための猶予ではなく、政治的な「踏み絵」だ。イランが応じなければ攻撃の口実になり、応じれば最高指導者の権威が国内で失墜する。どちらに転んでもイランにとっては厳しい。
日本に例えると、こんな状況だ。あなたの家の前の道路を近所の住人がバリケードで塞いだ。警察(アメリカ)が「48時間以内にどかせ」と言っている。だがバリケードの下には地雷が埋まっていて、簡単には撤去できない。期限が来たら警察は住人の家を壊すと言っている。あなたは通勤できずに困っている。
イラン外相の「日本だけ通していい」発言の罠
興味深い動きが水面下で起きている。イランのアラグチ外相が共同通信のインタビューで「日本関係船舶の通過を認める用意がある」と述べた。これは一見すると日本にとって朗報に見えるが、実態はかなり複雑だ。
え、日本だけ特別扱い?と思うかもしれないが、ここには計算がある。イランは日本を「仲介者」として利用したいのだ。2019年にも安倍首相がイランを訪問した実績があり、日本は数少ない「両方と話せる国」として認識されている。つまりイランの提案は、純粋な善意ではなく、アメリカとの交渉チャネルを確保するための外交カードだ。
茂木外相「個別交渉は考えていない」の真意
これに対し茂木外相は22日、「いまのところ個別に働きかけることは考えていない」と述べた。一見すると消極的に見えるが、これは慎重な判断だ。日本がイランと個別に交渉すれば、アメリカの圧力キャンペーンに穴を開けることになる。トランプ政権との関係を考えれば、独自路線を取るリスクは大きい。
だが同時に、日本のエネルギー安全保障は待ったなしだ。日本の原油輸入の約9割が中東経由で、その大半がホルムズ海峡を通る。封鎖が長引けば、ガソリン価格は1リットルあたり200円を超える可能性があり、家計への打撃は月あたり5,000〜8,000円の負担増になるとの試算もある。「考えていない」で済む話ではない。
CNNが報じた「最悪6カ月」シナリオ
CNNは「ホルムズ海峡封鎖は最悪の場合6カ月続く可能性がある」と報じている。アメリカは長期化阻止に動いているが、明確な戦略が見えないのが正直なところだ。軍事力でイランの沿岸施設を叩くことはできても、海峡の安全な通航を保証するには、機雷除去、護衛船団の編成、保険会社の引き受け再開など、複数のハードルがある。
6カ月という数字を日本の文脈で考えると背筋が寒くなる。石油備蓄は約200日分あるが、それは「輸入がゼロになった場合」の数字であり、実際には価格高騰による経済的ダメージが先に来る。製造業のコスト増、物流費の上昇、食品価格への転嫁。2022年のウクライナ危機時の物価上昇を思い出してほしい。あれが数倍の規模で起きうる。
日本に残された選択肢
日本が取りうる道は大きく3つある。第一に、アメリカ主導の護衛船団に参加する道。自衛隊の中東派遣が現実味を帯びるが、憲法上の議論は避けられない。第二に、イランとの個別交渉。外相は否定したが、状況が悪化すればカードとして温存している可能性はある。第三に、エネルギー調達の多角化を加速する道。オーストラリアやカナダからのLNG輸入拡大、再生可能エネルギーの導入加速などだが、短期的な解決にはならない。
いずれにしても、「考えていない」で押し通せるフェーズは終わりつつある。48時間の期限は日本時間で3月24日には切れる。その先に何が起きるか、注視するしかない。

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