アメリカがイランの「あの島」を狙っている。これ、原油価格と日本の家計に直結する話なんだが

アメリカがイランの「あの島」を狙っている。これ、原油価格と日本の家計に直結する話なんだが 世界情勢

ホルムズ海峡に浮かぶ小さな島が標的に。少し前、気になるニュースが流れてきた。アメリカがイランのハルク島を標的にしている、という話だ。BBCがこの件を詳しく報じているが、「ハルク島ってどこだ?」という人も多いと思うので、まず自分なりに整理してみる。

イランの石油輸出を支える「命綱」の島。ハルク島はペルシャ湾に浮かぶ小さな島で、面積はざっと東京ディズニーランドの数倍程度しかない。だがこの島には、イランの石油輸出のおよそ9割を担う巨大な石油ターミナルが存在する。つまりここを潰せば、イランの外貨収入の大部分を一撃で断てる。アメリカが狙うとしたら、軍事施設よりもむしろこういう「経済の急所」である、という発想は実に合理的で、かつ非常に冷酷だと思う。これは正直きつい話だ。

なぜ今ハルク島なのか、歴史的な文脈がある。イランとアメリカの対立は、1979年のイスラム革命にまで遡る。それ以前、イランはアメリカの中東戦略における最重要パートナーのひとつだった。パフラヴィー朝のもとで近代化が進み、石油利権はイランとアメリカ・イギリスが深く絡み合う形で管理されていた。革命でその構図が完全にひっくり返り、40年以上にわたって両国は敵対関係を続けている。核開発問題、制裁、ハマスやヒズボラへの支援疑惑、そしてウクライナ侵攻後のロシアとの接近……。アメリカからすれば、イランは中東の不安定化装置そのものに映っている。それでも、イランには豊かな文明の歴史がある。ペルシャ文化は数千年の深みを持ち、詩・建築・哲学においてイスラム世界を牽引してきた。その国が今こういう局面に立たされているのは、歴史のどこかで道が大きく曲がってしまったからだと思う。

SNSでも「なぜ今これを」という声が広がっている。X(旧Twitter)で「Why has the」と検索すると、この件に関連する英語の投稿がいくつも流れてきている。「制裁で済ませられる話を軍事行動に結びつけるな」という批判もあれば、「イランが核開発を止めない限りこれは避けられなかった」という擁護もある。見ていると、欧米の中でも意見が割れているのがよくわかる。一枚岩ではない、という点は覚えておく必要がある。

ハルク島へのリスクは日本の原油価格に直撃する。さて、これが日本にどう関係するかという話だ。日本はエネルギーの大半を中東に依存しており、中東からの原油輸送のほぼすべてがホルムズ海峡を通る。ハルク島周辺でなんらかの軍事的緊張が高まれば、タンカーの航行リスクが上がり、保険料が跳ね上がり、原油の輸入コストが増加する。それがガソリン価格、電気代、食料品の物流コストへと波及していく。日本は資源を持たない代わりに、世界最高水準の省エネ技術と外交的な中立性を強みにしてきた国だ。エネルギー安全保障の多角化を着実に進めてきたのは評価されるべきだが、それでも中東依存から完全に脱却できていない現実は、今回のようなニュースのたびに痛感させられる。

ポジティブとネガティブ、シナリオは両方見ておく必要がある。ポジティブなシナリオとしては、アメリカがハルク島への実際の攻撃には踏み込まず、あくまで圧力の手段として「標的にしている」という情報を流すことで、イランに外交交渉を迫る、という展開が考えられる。実際、過去のイラン核合意(JCPOA)の交渉でも、軍事的圧力と外交チャンネルが並行して動いていた。交渉のテーブルが再び設けられ、原油市場の不安が和らぐ可能性は十分ある。一方でネガティブなシナリオは、誤算や誤射、あるいはイラン側の強硬な反発によって実際の衝突が起きるケースだ。ホルムズ海峡が封鎖に近い状態になれば、世界の原油供給の約20パーセントが一気に滞る。これは2022年のロシア制裁に匹敵するか、それ以上のエネルギーショックを引き起こしかねない。

カギはイランが「出口」を見つけられるかどうかだ。今後の展開として、最も注目すべきはイランの内部情勢と、中国・ロシアが仲介役に入るかどうかだと思う。イランは経済制裁で国内経済が相当疲弊しており、強硬路線を続けることへの国民の不満も積み重なっている。最高指導者体制への求心力がどこまで保つか、という問題は避けて通れない。一方、中国はイランの最大の石油購入国として独自のパイプを持っており、ここに何らかの調停機能が生まれる可能性は残っている。日本としては、中東の安定に直接の利害関係を持つ国として、独自の外交チャンネルを絶やさないことが重要になる。表に出ない地道な外交が、結局は一番効く局面だ。エネルギー安全保障と外交力、この両輪が今後の日本にとっての鍵になるだろう。

出典:BBC World

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