また欧州でこういう事件が起きた。少し前、BBCが報じたニュースによると、オランダのアムステルダムにあるユダヤ人学校で爆発が起きた。市長はこれを「意図的な攻撃」と断言している。ロッテルダムで別の事件が起きたばかりで、ユダヤ系の公共施設にはすでに警備が強化されていたにもかかわらず、今度はアムステルダムで爆発だ。タイミングも場所も、偶然とはとても言えない。
「意図的な攻撃」という市長の言葉の重さ。ユダヤ人学校が標的になったというのは、単なる爆発物事件ではなく、明確に特定のコミュニティを狙ったヘイトクライムとして受け止めるべき話だ。子どもたちが通う学校に爆発物を仕掛けるというのは、どんな政治的立場であれ正当化できる行為ではない。これは正直きつい。ロッテルダムの事件の詳細はまだ不明な部分も多いが、連続して起きているという事実が、オランダ国内でユダヤ人コミュニティへの脅威が高まっていることを示している。
オランダとユダヤ人の複雑な歴史。オランダはかつて、アンネ・フランクが隠れ家で日記を書いた国だ。第二次世界大戦中、オランダ系ユダヤ人の約75パーセントがナチスによって殺害されたという歴史があり、これはヨーロッパの中でも特に高い割合だった。一方でアムステルダムは長い歴史の中でユダヤ人が積極的に社会参加してきた都市でもあり、17世紀には他の国々で迫害されたユダヤ人たちがここに移住してきた経緯もある。寛容と迫害、両方の歴史を抱えた街だ。そのアムステルダムで今またこういう事件が起きているというのは、歴史の重みを知れば知るほど、言葉を失う。
2024年のポグロムとも呼ばれた事件の余波。昨年11月、アムステルダムではサッカーの試合後にユダヤ人サポーターが暴徒に襲撃されるという事件が起きた。この事件はヨーロッパ全土に衝撃を与え、「現代のポグロム」と表現する声も出た。その後も緊張が続くなか、今回の学校爆発が起きた。ガザ情勢をめぐる感情的な対立が、欧州各地でユダヤ人コミュニティへの敵意という形に変換されていく構図がある。それが正しい「怒りの向け先」かどうかは別として、こうした事件が繰り返されている現実は直視しなければならない。
Xでも様々な声が上がっている。X(旧Twitter)で「Explosion Amsterdam Jewish」と検索すると、欧州各国のユーザーを中心に「これはテロだ」「オランダは今どうなっているのか」「ユダヤ人学校への攻撃を許してはいけない」という声がある一方、事件の背景を中東情勢と結びつけようとする投稿も多く、反応が割れている。感情的なコメントも多いが、「反ユダヤ主義が欧州で再び頭をもたげている」という問題意識は広く共有されているように見える。
日本の経済と暮らしへの間接的な影響。「オランダの話が日本にどう関係するのか」と思う人もいるかもしれないが、これは無縁の話ではない。オランダはEUの主要経済国であり、欧州における政治的安定の象徴でもある。ユダヤ人コミュニティへの攻撃が続き、社会不安が高まれば、欧州全体の政治的極端化が加速するリスクがある。極右勢力の台頭、移民政策の急激な転換、そしてEUの結束力の低下は、貿易や為替相場を通じて日本経済にも波及してくる。また、日本企業はオランダに多数の欧州拠点を持っており、治安や社会情勢の悪化は現地スタッフや駐在員の生活環境にも直結する話だ。
ポジティブとネガティブ、両方のシナリオを考える。ポジティブなシナリオとして考えられるのは、今回の事件をきっかけにオランダ政府が反ユダヤ主義への対応を本格化させ、EU全体で連携したヘイトクライム対策が強化される流れだ。実際、昨年の暴力事件後にオランダ政府は対応強化を表明しており、今回さらに圧力が高まれば、具体的な法整備や国際連携につながる可能性がある。日本は長年、宗教的・民族的対立が比較的少ない社会を維持してきた。その経験から、国際社会における「包摂的な社会モデル」として発信できる立場にある。ネガティブなシナリオとしては、こうした事件が繰り返されるなかで欧州社会の分断が深まり、反移民・反少数派を掲げるポピュリスト政党がさらに勢力を伸ばすことだ。そうなれば欧州の政策が内向きになり、国際的な安全保障や経済協力の枠組みが揺らぐ。
鍵は「欧州が今回どう動くか」だ。今後の焦点は二つある。一つは、オランダ当局が犯人を特定し、動機と背景を明確にできるかどうか。組織的な関与があるのか、それとも個人的な過激化によるものなのかで、対策の方向性がまったく変わってくる。もう一つは、EU全体での反ユダヤ主義対策が言葉だけで終わらないかどうかだ。欧州は今、試されている。対話と法の支配で応じるのか、恐怖と排除で応じるのか。その選択が、欧州の社会的安定だけでなく、世界の民主主義の信頼性にも直結するだろう。日本にいる自分たちも、対岸の火事として眺めていられる話ではないと、正直そう思っている。
出典:BBC World


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