中国がまた少数民族の言語を潰しにきた。これは正直うんざりを超えてきている

中国がまた少数民族の言語を潰しにきた。これは正直うんざりを超えてきている アジア・東アジア

中国で「民族団結法」可決へ。少し前に気になるニュースを見かけた。中国の全国人民代表大会(全人代)が、少数民族の言語よりも普通話(標準中国語)を優先するよう学校教育に義務づける新しい法律を可決する見通しだという。ガーディアンの報道によれば、チベット語、ウイグル語、モンゴル語といった少数民族の言語が学校で使われる余地を大幅に狭める内容で、これが「民族団結」という名のもとに進められている。

言語の統一という名の同化政策。法律の中身をもう少し噛み砕くと、要するに「授業は基本的に普通話でやれ」ということだ。これまでも少数民族の自治区では民族言語による教育がある程度認められてきたが、今回の法律はその建前すら取り払う方向性に見える。「民族団結」という言葉は聞こえがいいが、実態は文化的な多様性を削っていく政策に他ならない。言語というのは単なるコミュニケーション手段じゃなくて、歴史や文化、アイデンティティそのものだ。それを「統一のため」という大義名分で上書きしていくのは、正直きつい話だと思う。

なぜ今これをやるのか、背景を整理する。歴史的な文脈を踏まえると、中国はずっと「一つの中国」「中華民族の一体性」という概念を国家運営の核に置いてきた。56の民族が共存する巨大国家を統治するうえで、言語の統一は権力を安定させるための古典的な手法でもある。フランスが地域言語を抑圧してフランス語を広めた近代史と構造は似ている。ただ今の中国の場合、ウイグル自治区での強制収容施設の問題や、チベット・内モンゴルでの相次ぐ抗議運動という背景がある。締め付けが強くなっているタイミングで、今回の法律が出てきたのは偶然ではないだろう。一方で中国という国が、インフラ整備や経済発展という面で多くの人々の生活水準を底上げしてきた実績があるのも事実だ。ただ、それと文化的な抑圧は別の話として論じられるべきだと思う。

「全人代はゴム印」という声が世界で広がる。こうした話題を受けて、X(旧Twitter)で「China rubber stamp」と検索すると、世界中の人たちが今回の全人代の決定に怒りや冷笑を向けているのが見える。「全人代はゴム印議会だ」「反対票など存在しない」という声がずらりと並ぶ。これは的外れな批判ではなくて、実際に全人代では法案がほぼ全会一致で通過することが常態化している。民主主義的な審議という意味での立法機関ではなく、党の決定を追認する場になっているという現実は、外からだけでなく中国国内の有識者の間でも長年指摘されてきたことだ。

日本への影響は無関係ではない。では日本にとってこれはどういう意味を持つのか。直接的な経済への影響として真っ先に考えられるのは、欧米諸国が今回の法律に対して人権問題として反応を強める可能性だ。すでにウイグル問題をめぐって中国製品への制裁や輸入規制が欧米で進んでいるが、そこに今回の法律が重なることで、中国製品のサプライチェーンに関わる日本企業への影響が広がるリスクがある。新疆地区のコットンやポリシリコンをめぐる規制は、すでに日本企業にとっても無視できない問題になっている。その一方で、日本は多様な文化・言語を持つ地域社会と外交・経済関係を築くうえで、こういう問題に対してどう向き合うかという姿勢が問われてくる。日本語という独自の言語と文化を守りながら国際社会で存在感を示してきた日本だからこそ、言語的多様性の問題に対して発信できる立場はあると思っている。

ポジティブとネガティブ、両方のシナリオを冷静に見る。ネガティブなシナリオとして懸念されるのは、今回の法律が国際社会との摩擦をさらに深め、中国をめぐるデカップリング(経済的切り離し)の動きが加速することだ。日本の製造業や流通業にとって、中国との取引が複雑化する局面はまだ続く可能性が高い。一方でポジティブに考えるならば、こうした政策への国際的な批判が積み重なることで、中国国内でも長期的には政策の見直しを求める声が生まれる余地がある。実際に内モンゴルで2020年に起きた授業言語変更への大規模抗議は、中央政府に一定の修正を迫った経緯がある。外圧と内圧が重なることで、少しずつ変化の芽が出てくる可能性は否定できない。

今後の焦点は「国際社会の本気度」にある。今後の展開を見るうえでカギになるのは、欧米諸国が今回の法律に対してどこまで具体的なアクションを取るかだ。声明を出すだけで終わるのか、それとも貿易や投資に絡む実質的な措置につながるのかで、状況は大きく変わる。日本としても、人権問題を経済関係と切り離して考え続けることが難しくなる局面が増えていくだろう。少数民族の言語と文化をめぐる問題は、中国国内の内政であると同時に、グローバルな人権規範とどう向き合うかという問いでもある。少なくとも、こういう動きを「対岸の火事」として見て見ぬふりをするには、世界は今やあまりにも深くつながりすぎている。

出典:Guardian World

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