ホルムズ海峡が封鎖されている。これ、他人事じゃないと気づいてから急に怖くなった

ドバイの巨大港が静まり返っている。少し前、BBCがこんな気になるレポートを出していた。中東最大の港として知られるドバイのジュベル・アリ港を訪れた映像で、イランによるホルムズ海峡の封鎖が始まってから、ここの貿易が深刻な打撃を受けているという内容だ。かつて世界中のコンテナ船が列をなして入港していた場所が、今は明らかに活気を失っているという。これを見て「遠い中東の話」と流せる人は、正直なところエネルギー事情をあまり意識したことがない人だと思う。

ホルムズ海峡封鎖の深刻な意味。ホルムズ海峡というのは、ペルシャ湾から外洋へ抜ける唯一の出口にあたる、幅わずか50キロ程度の海峡だ。この狭い通り道を、世界の原油輸出量の約20〜30パーセントが通過している。つまりここが塞がれると、サウジアラビアやイラク、クウェート、アラブ首長国連邦といった国々からのエネルギー輸出がほぼ止まる。ドバイのジュベル・アリ港は中東の物流ハブとして機能してきたが、その動脈が詰まれば周辺の港もまともに動けなくなる。BBCの映像で映し出された閑散とした港の様子は、その影響がすでに現実のものになっていることを示している。

イランが動く背景にある歴史と焦り。なぜイランがこういう行動に出るのか、少し歴史を振り返ると見えてくるものがある。イランはかつてペルシャ帝国の栄光を持ち、文化・学術・芸術で中東を牽引してきた文明国だ。詩人ハーフェズやルーミーを生んだ国であり、その知的・文化的な深みは本物だ。しかし現代においては、アメリカからの経済制裁と国際的な孤立によって、国内経済は長らく疲弊している。こうした状況の中で、ホルムズ海峡の「封鎖カード」は、イランが数少なく持つ地政学的な切り札だ。外交で追い詰められるたびに、この手を使って世界に「我々を無視するな」というメッセージを送り続けてきた経緯がある。感情的に理解できる部分もあるが、その影響が世界経済に広がっていることを考えると、さすがにこれは許容の範囲を超えている。

SNSにも広がる緊張と不安。X(旧Twitter)で「BBC visits key」と検索すると、このレポートへの反応がいくつか出てくる。英語圏のユーザーの中には「ホルムズが完全に機能停止したら西側経済はどうなるんだ」という声や、「ドバイへの影響はもう現実になっている」という冷静な分析を書いている人もいる。一方で「これは交渉のための演出だ」「どうせ数週間で終わる」という楽観論も混在している。ただ、港のコンテナが動かなくなっている現実を見てしまうと、その楽観論は少し根拠が薄い気もする。

日本への影響は直撃レベルだ。ここからが本題で、これを日本の話として読むと一気に現実感が増す。日本はエネルギーの約9割を輸入に頼っており、その多くが中東からの原油と天然ガスだ。しかもその輸送ルートの多くがホルムズ海峡を通過している。ホルムズが封鎖されたままになれば、原油価格の上昇は避けられず、それは電気代・ガス代・ガソリン代という形でそのまま家庭に届く。さらに物流コストが上がれば食料品や日用品の価格にも跳ね返る。日本が長年培ってきた省エネ技術や多様なエネルギー調達の取り組みは確かに強みではあるが、この規模の供給ショックには完全には対応できない。これは正直きつい話だ。

ポジティブとネガティブの分岐点。今後の展開として、明るいシナリオと暗いシナリオの両方が見えている。まず明るい方向としては、アメリカや欧州の外交圧力、あるいはオマーンや日本といった対話チャンネルを持つ国が仲介に入り、段階的に緊張が緩和されるケースがある。日本は過去にも独自のルートでイランと対話してきた実績があり、今回もその外交力が活きる可能性がある。実際に岸田政権以降の日本外交は、アメリカ寄りになりながらも中東との関係維持を意識した動きを続けていた。一方、暗いシナリオとしては、封鎖が長期化し、中東諸国との武力衝突に発展するケースだ。そうなれば原油価格は一気に跳ね上がり、世界的なインフレが再加速する。日本にとっては円安と物価上昇が同時に来るという、最も避けたい組み合わせになりかねない。

カギを握るのは日本の仲介外交だ。今後の見通しとして、この封鎖が数週間以内に完全解除されるのは難しいと思う。ただ、完全な軍事衝突に発展するシナリオも、現時点では各国がそれを避けようとしているため、可能性は低い。最も現実的なのは「断続的な緊張緩和と再燃を繰り返しながら、外交交渉が進む」という展開だ。その中で日本がやるべきことは、エネルギー調達ルートの多様化を加速させることと、イランとの対話チャンネルを維持し続けることの両方だ。中東に一定の信頼を持つ国として、日本がこの局面で存在感を見せられるかどうかが、今後の日本外交の重要な試金石になるだろう。ジュベル・アリ港にコンテナ船が戻る日を、ただ待つのではなく、そこに向けて動ける立場に日本はいるはずだ。

出典:BBC World

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