ハマスがイランに「Gulf諸国への攻撃をやめろ」と言っている。この関係性、実はかなり複雑なんだが

ハマスがイランに「Gulf諸国への攻撃をやめろ」と言っている。この関係性、実はかなり複雑なんだが 世界情勢

ハマスがイランに異例の要求。ちょっと気になるニュースが入ってきた。パレスチナのイスラム組織ハマスが、最大の支援国であるイランに対して「湾岸諸国への攻撃をやめるよう求める」という声明を出したというのだ。BBCの報道によれば、同時にハマスはイランがアメリカやイスラエルの「侵略」に対して自衛する権利は認めている、という非常に微妙なバランスの上に立つ声明だった。支援してもらっている側が、支援者に「その動きはやめてほしい」と言う。これは表面上は礼儀正しいように見えて、実は相当に込み入った話だと思う。

ハマスがイランをたしなめた理由。自分なりにこの動きを読み解くと、ハマスが最も恐れているのは「中東全体の不安定化によってパレスチナ問題が埋没すること」だと思う。イランが湾岸諸国、つまりサウジアラビアやアラブ首長国連邦といった国々を刺激し続ければ、アラブ諸国の世論はパレスチナへの連帯よりもイランへの警戒に向いてしまう。ハマスにとってアラブ世界の支持は生命線であり、その支持を削るような動きをイランにされては困る。だから今回の声明は「イランへの批判」でも「イランへの服従」でもなく、「戦略的に動くな」という同盟内のシグナルなのだ。

イランとハマス、そもそも奇妙な同盟。歴史的な背景を少し整理しておきたい。イランはシーア派のイスラム国家であり、ハマスはスンニ派に属するパレスチナ組織だ。宗派的には対立関係にあってもおかしくない二者が、なぜ手を組んでいるかというと、共通の敵がイスラエルとアメリカだからだ。イランは1979年の革命以来、反イスラエル・反米を国家のアイデンティティの柱にしてきた。ハマスはその点で利害が一致し、資金・武器の提供を受けてきた。一方でイランはイエメンのフーシ派、レバノンのヒズボラなど複数の「代理組織」を中東各地で支援しており、これが湾岸諸国にとって長年の脅威になっている。今回ハマスが声を上げたのは、そのイランの地域戦略が自分たちの足を引っ張り始めているという現実認識があるからだろう。これは正直、かなり複雑な内部矛盾だと思う。

X上でもこの動きへの反応は様々。X(旧Twitter)で「Hamas urges key」と検索してみると、英語圏を中心に「ハマスがイランを批判するなんて珍しい」「これはイランが孤立し始めているサインでは」といった声が見られる一方で、「どうせパフォーマンスだ、本質は変わらない」と冷めた見方をする声もある。地政学的に敏感な層はこれを「アラブ諸国との関係修復を狙う動き」として読んでおり、単なる内輪もめではなくもっと大きな外交の文脈で捉えようとしているのが印象的だった。

日本への影響は原油価格を通じて直結する。この話が「遠い中東の話」で終わらないのが、エネルギー資源に依存した日本経済の現実だ。日本が輸入する原油の大半は中東から来ており、湾岸諸国との関係が不安定化すれば原油価格は上昇し、それはガソリン代・電気代・食品価格という形で私たちの日常に直撃する。2022年のロシアのウクライナ侵攻後の物価高騰を経験した身としては、中東の緊張が高まるたびにこの不安は無視できない。日本はエネルギーの安定調達のために長年中東各国と丁寧な外交を維持してきた。これは日本の外交の地味だが本質的な強みであり、イランとも湾岸諸国ともそれなりの関係を保ってきた実績がある。

ポジティブとネガティブ、両方の未来がある。今回の展開にはポジティブなシナリオとネガティブなシナリオが両方存在する。ポジティブな方向で言えば、ハマスがイランの動きを抑制しようとしているという事実は、中東内部での自律的な緊張緩和のシグナルになり得る。アラブ諸国がパレスチナ問題の解決に前向きになれる環境が整えば、地域全体の安定につながり、日本へのエネルギー供給も落ち着く可能性がある。一方でネガティブなシナリオとして、イランがハマスの要求を無視してフーシ派などを通じた湾岸への揺さぶりを続けた場合、中東内部の亀裂がさらに深まる。サウジアラビアとイランの対立が先鋭化すれば、石油輸送の要衝であるホルムズ海峡周辺のリスクが高まり、原油市場は一気に不安定化する。さすがにそのシナリオは日本にとっても洒落にならない。

鍵はアラブ諸国の仲介力と日本の外交的存在感。今後最も注目すべきポイントは二つだと思っている。一つはサウジアラビアが主導するアラブ連盟がイランに対してどこまで圧力をかけられるか、あるいは対話の枠組みを作れるかだ。2023年に中国の仲介でサウジとイランが国交を回復したという前例があり、外交的な動きが完全に止まっているわけではない。もう一つは日本外交がこの文脈でどう動くかだ。日本はイランと独自のパイプを持ちつつ、湾岸諸国とも深い経済的つながりがある。この立ち位置はエネルギー安全保障を考えるうえで唯一無二の強みになる。ハマスの今回の声明は小さなシグナルかもしれないが、中東内部の力学が動いている証拠だ。その変化を正確に読んで動ける国が、次の中東外交で存在感を発揮することになるだろう。

出典:BBC World

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