豪州政治で燃料・資源課税論争が加速。こんなニュースが飛び込んできた。オーストラリアの上院議員デイビッド・ポコックが、天然ガスの輸出に対して25%の税を課すべきだという主張を繰り返している。同時に、中東情勢の緊張を受けて同国政府が燃料備蓄の約20%を放出すると発表し、エネルギーをめぐる動きが一気に慌ただしくなっている。「底をつくには程遠い」とエネルギー大臣は強調しているが、政府がわざわざそれを言わなければならない状況というのは、それなりに空気がピリついているということだ。
ポコック議員の主張の背景にある問題意識。ポコックが訴えている「ガス輸出への重税」というのは、突拍子もない話ではない。オーストラリアは世界有数の液化天然ガス(LNG)輸出国でありながら、国内のエネルギー価格が上昇し、一般市民や中小企業が光熱費に苦しんでいるという皮肉な状況が続いている。つまり、地元で掘って地元で使えば安いはずのエネルギーが、外に売られてしまって国民に恩恵が回ってこないという構図だ。これに怒るのは当然で、ポコックはその感情を政策として言語化している。
資源大国の「恵みの呪い」とも言える構造。この問題には歴史的な背景がある。オーストラリアは19世紀のゴールドラッシュ以来、資源を掘って外に売ることで経済を回してきた国だ。広大な国土に豊富な地下資源、そして英語圏のビジネス環境という強みを持ちながら、「資源で潤うのは外国企業と株主で、地元には残らない」という批判は何十年も前からある。オーストラリアの人々はこういう問題に対してオープンに議論する文化があって、そこは素直に好感が持てる。ポコックのような独立系議員が大きな政党に縛られずに発言できる政治の多様性も、オーストラリアの健全さを表している。
SNS上でも賛否両論が渦巻いている。X(旧Twitter)で「Pocock repeats calls」を検索すると、「ガス会社を優遇してきた歴代政権への怒り」を代弁する声がある一方で、「課税強化は投資を萎縮させる」「エネルギー安全保障に逆効果」という反論も目立つ。興味深いのは、これが左右の対立というより、「誰が資源の恩恵を受けるべきか」というより根本的な問いをめぐる議論になっているところだ。オーストラリア社会のエネルギーに対する意識が、ここ数年で大きく変わってきていることがよくわかる。
日本のLNG調達に直接影響が及ぶリスク。さて、これは日本にとって完全に他人事とは言えない。日本はオーストラリアから大量のLNGを輸入している。実際、オーストラリアは日本にとって最大級のLNG供給国のひとつであり、総輸入量の3割以上をそこに依存している地域も含めれば、エネルギー政策における「生命線」と言っても大げさではない。もしオーストラリアが輸出課税を強化した場合、そのコストが価格に転嫁されて日本の輸入コストが上がる可能性は十分にある。電気代・ガス代への波及を考えると、家庭レベルでも影響が出てくる話だ。
日本の「交渉力のある調達体制」が問われる。ただ、日本がこういう状況に完全に無防備かというとそうでもない。日本は長期契約でLNGを調達することに非常に長けた国で、商社や電力会社が何十年にもわたって築いてきたサプライヤーとの関係は簡単には崩れない。また、日本の技術力を背景にオーストラリアの資源開発プロジェクトに参画しているケースも多く、「売り手と買い手」という単純な関係ではなく「共同開発パートナー」としての立ち位置を持っていることは強みだ。これは正直、地味だけど日本の外交・産業政策のうまいところだと思っている。
ポジティブとネガティブ、両方の未来を見ておく。ポジティブなシナリオを描くとすれば、オーストラリアが輸出課税を導入することで得た財源を国内再生可能エネルギーに投じ、長期的に安定した低コストのクリーンエネルギーを日本にも供給できる体制が整う可能性がある。水素やアンモニアといった次世代エネルギーでの日豪協力はすでに動き出していて、その流れが加速するきっかけになるかもしれない。一方でネガティブなシナリオとしては、課税強化によってLNGプロジェクトへの投資が冷え込み、供給量が減少する中で日本が代替調達先の確保を急がなければならなくなる展開もあり得る。これは正直きつい。中東情勢が不安定な今、代替先を一気に探すのは容易ではないからだ。
鍵は日豪の「エネルギー同盟」をどう進化させるか。今後の展望として言えるのは、オーストラリアの資源課税議論は一過性のポピュリズムで終わらず、政策として具体化していく可能性が高いということだ。ポコックのような独立系議員が繰り返し発言し続けることで世論を動かし、大政党が無視できなくなるのがオーストラリア政治の現実の動き方でもある。日本としては、単なるLNG買い手としてのポジションから脱し、水素・アンモニア・洋上風力といった次世代エネルギーの分野で対等なパートナーとして関係を深めていくことが、エネルギー安全保障の文脈でも最も合理的な選択になるだろう。「日豪エネルギー協力の深化」という地味に聞こえるキーワードが、今後の日本のエネルギーコストを左右するカギになる。


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