イランの民衆が「廃墟だけが残ったら?」と言い始めている。これは正直きつい

イランの内部から出てきた声。少し前、BBCが気になる記事を公開していた。タイトルは「廃墟しか残らなかったら、どうするんだ?」という問いかけで、この記事によれば、かつて政府の強硬路線を支持していたイランの教師や技術者、商店主といった「普通の市民」たちが、今になって深刻な疑念を抱き始めているという内容だ。戦争を支持していた人たちが「これは正しかったのか」と自問し始めている。それも表向きではなく、BBCの取材に対してかなり率直に。

支持者が揺らぎ始めた背景。イランという国は、1979年のイスラム革命以来、「外部の敵と戦う」という構図が政治の根幹に組み込まれてきた。アメリカや西側への対抗、イスラエルとの代理戦争、地域における影響力の拡大。こうした姿勢はイデオロギーとして国民の一部に深く浸透していて、単純に「政府に騙されていた」という話ではない。革命の記憶がある世代には、本気でその大義を信じてきた人たちがいる。それが今、現実の経済崩壊と軍事的敗北の予感が重なることで、静かに崩れ始めている。これは正直きつい。信じて生きてきたものが、目の前で意味を失っていく感覚というのは、相当なものだと思う。

イランが持つ豊かな文化的土台。忘れてはいけないのは、イランがペルシア文明の末裔であるということだ。詩人のルーミーやハーフィズを生んだ国であり、数学・天文学・医学において中世の世界をリードした知的土壌がある。バザールの商人文化も、決して一筋縄ではいかない複雑な知性と柔軟性を持っている。今BBCに語っている教師や技術者たちも、そういう土台の上に立っている人たちだ。だからこそ、今の状況を「それでもいい」と割り切れなくなっている。

世界でも同じ問いが広がっている。X(旧Twitter)で「What left with」と検索すると、イラン情勢に限らず、戦争や政変を経験した人々が「残ったものは何か」を問う投稿が世界中から流れてきている。この問いは普遍的だ。廃墟の中に立って何を見るか、それが国の未来を決める。そういう声が今、各地で上がっているのを見ると、単純に「他人事」とは言えない気分になる。

日本の経済・エネルギーへの影響。では、これが日本にどう関係するかというと、まず真っ先に考えるべきはエネルギーと中東の安定だ。日本が輸入する原油の中東依存度は依然として高く、ホルムズ海峡の安全は日本の経済の生命線に直結している。イランが内部から不安定化し、混乱が深まれば、それは地域全体の地政学リスクを押し上げる。原油価格が跳ね上がれば、輸送コストから電気代まで連鎖して、結局は日本の家計に返ってくる。日本はエネルギー自給率が低いという弱点を持っている分、中東の安定に対して本質的に敏感な構造になっている。ただ、日本がイランと比較的良好な外交チャンネルを維持してきたこと、そして複数の調達先を持とうとしてきたことは、こういう局面での強みになりうる。

ポジティブとネガティブ、両方を見ておく。ポジティブなシナリオを言うならば、イランの市民社会が内側から声を上げ始めていることは、長期的には変化の萌芽になりうる。過去を見ても、変革は多くの場合、外圧ではなく内部の疑念から始まっている。市民が「この方向でいいのか」と問い始めたとき、その国は次のフェーズに向かう可能性がある。外交交渉が再び動き出せば、核合意をめぐるプロセスが再起動し、原油供給の安定にもつながる。一方でネガティブなシナリオは深刻だ。内部の疑念が政権への圧力となり、政権側がかえって強硬路線に傾く可能性がある。混乱が広がれば地域の代理戦争がさらに激化し、エネルギー市場の不安定化が長期化する。イランが「廃墟」になることは、日本を含む世界の経済にとってもコストが大きい。

今後のカギは「内部の声」の行方にある。今後を見るにあたって、最も重要なのはイランの市民社会の動向だ。BBCに語った教師や商店主のような人たちの声が、どのくらいの広がりを持つのか。そしてイランの政権が、その声をどう扱うかが分岐点になる。外交的には、アメリカや欧州がこのタイミングでどのような対話の窓口を残すかが鍵だ。制裁一辺倒では市民が追い詰められるだけで、変化の芽を潰しかねない。日本にとっては、中東外交における独自のチャンネルを活かして、橋渡し的な役割を果たす余地がある。「廃墟だけが残った」という結末を避けるためには、内側からの変化を静かに支えるアプローチが、今の局面では最も現実的な道だと思っている。

出典:BBC World

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